東京高等裁判所 昭和27年(う)2753号 判決
原判決が証拠の標目として、被告人の検察官に対する昭和二十六年一月七日及び同月八日附供述調書合計二通並びに原審相被告人磯部弘の検察官に対する昭和二十六年十月二十一日附供述調書一通を掲げていることは所論のとおりである。
よつて、記録を精査すると、右被告人の検察官に対する供述調書二通及び右磯部弘の検察官に対する供述調書一通については、昭和二十七年二月九日原審第七回公判期日において、他の証拠と共に検察官から、証拠調の請求があり、これに対し、原審相被告人磯部弘の弁護人片野真猛は同意、被告人の弁護人島田清は不同意の意見を述べたところ、原審は、被告人の供述調書二通はその採否の決定を留保し、右磯部弘の供述調書はこれを採用する旨決定した上これを取り調べ、記録に編綴し、次いで、昭和二十七年四月一日第九回公判期日において、右被告人の供述調書二通を他の証拠と共に採用する旨決定してこれを取り調べ、記録に編綴したことが認められる。而して、証拠調の請求に関する意見は一回これを陳述せしめるを以て足り、右の如く、一旦採否の決定を留保した場合に、その後その採否を決定する前重ねて意見を陳述せしめる必要はないものと解せられるから、原審の右訴訟手続には何等違法の点はない(弁護人は被告人の供述調書二通が一旦撤回せられ再び提出せられたように主張するが、原審の訴訟経過は、右説明のとおりである)。尤も、昭和二十七年四月一日原審第九回公判調書の別紙証拠関係カードの記載によれば、右原審相被告人磯部弘の供述調書が他の証拠と共に取り調べられた旨記載されているが、右は前記説明のように既に原審第七回公判調書において取り調べられ、記録に編綴されていることが明らかであるから、右は二重の手続をしたものであり、右供述調書の証拠調は先の取り調べによつて完了し、二重の手続をしたことによつて、先の証拠調の効力が変更されたものとは到底解し難い。従つて、論旨はすべて理由がない。